2022年に公開され、2023年アカデミー賞で7冠を達成した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、マルチバースを舞台にした斬新な物語です。主演のミシェル・ヨーがアジア人女性として初めてアカデミー主演女優賞を受賞し、独特のビジュアル表現や家族愛をテーマにしたストーリーが多くの観客を魅了しました。本作の魅力を、物語の詳細やキャスト情報を交えて深く掘り下げていきます。
簡単なあらすじ
エブリン・クァンは家族の問題と仕事に悩み、日常に追われる中年女性。彼女が経営するコインランドリーの業績は芳しくなく、夫ウェイモンドとの関係も冷え切っています。そんなある日、彼女の前に別のパラレルワールドからのウェイモンドが現れ、彼女が無数のマルチバースの鍵を握る存在であることを告げます。ここから、エブリンの驚きと冒険の世界が始まります。
主な登場人物
エブリン・クァン(ミシェル・ヨー)

平凡な日常を送りながらも、パラレルワールドを行き来することで次第に自分の力に目覚めていく中年女性。『グリーン・デスティニー』や『シャン・チー/テン・リングスの伝説』で知られるミシェル・ヨーが、圧巻の演技力で様々なエブリンを演じ分けています。
ウェイモンド・クァン(キー・ホイ・クァン)

エブリンの夫で、異なるパラレルワールドでは勇敢で力強い姿も見せるキャラクター。『インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説』で一躍有名となったキー・ホイ・クァンが、複雑な夫の役割を見事に演じ、アカデミー助演男優賞を受賞しました。
ジョブ・トゥパキ(ステファニー・スー)

エブリンの娘であり、マルチバースの強大な力を持つ存在「ジョブ・トゥパキ」。家族の期待と自身のアイデンティティに葛藤する姿を、『ザ・マーベルズ』でも活躍するステファニー・スーが力強く演じています。
ディアドレ(ジェイミー・リー・カーティス)

税務調査官で、エブリン一家にとって厳しい存在。しかしながら、ユーモアと独特の存在感を持つキャラクターです。『ハロウィン』シリーズでお馴染みのジェイミー・リー・カーティスが、この役で新たな一面を見せています。
スタッフ
監督 – ダニエル・クワンとダニエル・シャイナート
「ダニエルズ」として知られるダニエル・クワンとダニエル・シャイナートは、斬新なビジュアル表現と感情豊かなストーリーテリングで注目されるコンビです。彼らは2016年の映画『スイス・アーミー・マン』で大胆な作風を披露し、今回の作品でもその独特なスタイルが存分に発揮されました。『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』では、マルチバースの概念を巧みに操り、複雑な物語をわかりやすく描きました。
音楽 – ソン・ラックス
映画の音楽を手掛けたのは、実験的なアプローチで知られるアーティスト「ソン・ラックス」。彼の音楽は作品の独特な雰囲気と見事にマッチし、物語の感情的なシーンやアクションシーンを一層引き立てています。ソン・ラックスのサウンドスケープは、観客に映画のテーマやキャラクターの内面を深く感じさせる重要な要素となっています。
撮影 – ラーキン・サイプル
視覚的に圧倒される本作の撮影を担当したのは、ラーキン・サイプルです。彼は大胆なカメラワークや照明を駆使し、異なるパラレルワールドの雰囲気をそれぞれ際立たせました。特に、アクションシーンや感情的な場面において、その手腕が存分に発揮されています。
編集 – ポール・ロジャース
編集を手がけたポール・ロジャースは、複雑なストーリーをスムーズに進行させ、観客をマルチバースの多次元的な展開に迷わせることなく引き込んでいます。編集のテンポやリズムが、この映画のエネルギッシュな展開に大きく貢献しています。
美術 – ジェイソン・キサド
美術を担当したジェイソン・キサドは、多次元の世界を視覚的に具現化し、観客にそれぞれのパラレルワールドの独自性を強く印象付けました。彼のデザインは、映画全体のビジュアル体験に大きく寄与しています。
受賞歴
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、2023年のアカデミー賞で以下の7冠を達成しました:
- 作品賞:映画全体の完成度が最も高い作品に贈られる賞。
- 主演女優賞(ミシェル・ヨー):主演女優としての圧倒的な演技が評価されました。
- 助演男優賞(キー・ホイ・クァン):感情豊かな演技が高く評価されました。
- 監督賞(ダニエルズ):クリエイティブなビジュアルと独特なストーリーテリングが評価されました。
- 編集賞(ポール・ロジャース):複雑な物語をわかりやすく、テンポよく進行させた編集が高く評価されました。
- 脚本賞:オリジナル性の高い脚本が評価され、観客の心を掴むストーリーを作り上げました。
- 助演女優賞(ジェイミー・リー・カーティス):ユニークで多彩な役柄を見事に演じ切った彼女の功績が認められました。
これらの受賞は、映画が持つテーマ、演技、技術面での高い完成度が国際的に評価された結果です。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』のあらすじ【ネタバレあり】
ストーリー前半 – 主人公エブリンの葛藤と日常の問題
エブリンは、家族との関係や日常の仕事に追われ、何かが欠けていると感じながらも一歩を踏み出せない生活を送っています。税務署の監査を受ける中、ウェイモンドが突然、別のパラレルワールドから現れ、彼女の人生が一変します。
パラレルワールドが明らかに – ウェイモンドの“別の姿”登場
彼女の夫ウェイモンドは、別のパラレルワールドでまったく異なる姿をしており、エブリンが世界を救うための重要な存在であることを明かします。ここからエブリンは、多次元の自分と向き合い始めます。
娘ジョイとの確執 – 母娘の葛藤
ジョイとの関係が物語の中心にあります。エブリンは、娘が異なる価値観を持ち、彼女に対して理解が及ばないことに葛藤します。母と娘の関係がこの作品を感動的で普遍的なテーマへと昇華させています。
マルチバース世界への旅 – エブリンの奇妙な冒険
エブリンは次々と異なる世界に飛び込み、異なる人生を体験します。すべての可能性が広がる中で、彼女は家族や自分自身の存在の意味を問いかけます。
ジョブ・トゥパキとの対決 – 全ての命運をかけた戦い
ジョブ・トゥパキとしてのジョイとの対決は、映画のクライマックスです。無限の可能性を持つジョブ・トゥパキは、すべてを終わらせようとし、エブリンは世界を救うために彼女と対峙します。
ストーリー後半 – 家族の絆と自己実現
物語の終盤では、エブリンが家族の大切さを再確認し、全ての困難に立ち向かう力を得ます。家族との絆が強調され、彼女の自己実現への道が描かれます。
ラストシーン解説 – 全てを受け入れる勇気
ラストシーンでは、エブリンが全てのパラレルワールドを受け入れる決断をします。これは人生における選択の重要性と、失敗や過去を受け入れる勇気を象徴しています。
『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』の見所と魅力
マルチバースという斬新な設定
映画は、多次元宇宙という広がりのあるテーマを描き、観客に無限の可能性を感じさせます。これにより、どのような未来も選択次第で変わり得るというメッセージが強調されています。
ミシェル・ヨーの圧巻の演技
アジア人女性として初のアカデミー主演女優賞を受賞したミシェル・ヨーの演技は、多様なキャラクターを見事に演じ分け、物語に奥深さを与えています。
家族愛と自己実現のテーマ
映画全体を通して描かれるのは、家族の絆や自己実現の重要性です。エブリンとジョイの関係は、多くの観客に共感を与え、普遍的なテーマとして強く響きます。
独創的なアクションとビジュアル
映画のユニークなアクションシーンと鮮やかなビジュアル表現は、従来のアクション映画とは一線を画し、観客を夢中にさせます。
まとめ
キャスト陣の素晴らしい演技と独創的なビジュアルが際立つ『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』は、観る者を圧倒する作品です。ミシェル・ヨー、キー・ホイ・クァン、ステファニー・スーらが、家族愛や自己実現という深いテーマを描き出し、観客に大きな共感を与えます。映画は、マルチバースの設定を通じて、人生の選択の意味を問いかけ、普遍的な感情とテーマが巧みに描かれています。
全体を通じて、作品は視覚的にも感情的にも強いインパクトを残し、独自の世界観とユニークなアクション、そして多様なキャラクターが、観客を魅了します。