松本清張の代表作の一つである『ゼロの焦点』は、戦後間もない日本を舞台に、失踪した夫の謎を追う妻の執念と、登場人物たちの複雑な過去が織りなす社会派ミステリーです。この記事では、『ゼロの焦点』のネタバレを含む詳細なあらすじ、登場人物、映画版の概要などを解説していきます。
『ゼロの焦点』のネタバレ!
新婚旅行からわずか10日後、夫・鵜原憲一が金沢への出張中に失踪してしまう。妻の禎子は、憲一の同僚・本多の協力を得て金沢へ向かい、手がかりを探し始める。憲一の過去を辿る中で、かつて彼が立川署の巡査だったこと、そして田沼久子という女性と深い関係にあったことが明らかになる。
しかし、久子もまた失踪し、憲一の義兄・宗太郎、本多までもが殺害される。事件の真相を追う禎子は、室田耐火煉瓦会社の社長夫人・佐知子の過去に辿り着き、全ての事件の黒幕が彼女であることを知る。
佐知子は、戦後、米兵相手の売春婦「パンパン」として生計を立てていた過去を隠すため、憲一や久子、そしてその事実を知る宗太郎と本多を殺害したのだった。
最後は、禎子に過去を暴露された佐知子は、全てを失い海に身を投げる。
映画版『ゼロの焦点』の概要
『ゼロの焦点』は、これまでに何度も映画化、ドラマ化されています。中でも有名なのは、1961年に公開された野村芳太郎監督版です。
- 主演:久我美子(鵜原禎子役)、高千穂ひづる(室田佐知子役)、有馬稲子(田沼久子役)
- 主な舞台:能登、金沢
- 映画の特徴:モノクロ映画ならではの重厚な雰囲気で、戦後の暗い影を引きずる登場人物たちの心情がリアルに描かれている。
『ゼロの焦点』の登場人物
鵜原禎子 (演:久我美子)
主人公。夫・憲一の失踪の謎を追う。お嬢様育ちだが、芯の強い女性。 映画版では、久我美子が演じている。 久我美子は、戦後の日本映画を代表する女優の一人。小津安二郎監督作品などに出演。
室田佐知子 (演:高千穂ひづる)
室田耐火煉瓦会社の社長夫人。憲一と親しく、禎子を何かと気にかける。 実は、憲一や久子と同じ過去を持つ。 映画版では、高千穂ひづるが演じている。 高千穂ひづるは、宝塚歌劇団出身の女優。
田沼久子 (演:有馬稲子)
室田耐火煉瓦会社の受付嬢。 憲一と深い関係にあった。 英語が堪能だが、言葉遣いは粗野。 映画版では、有馬稲子が演じている。 有馬稲子は、『黒い十人の女』などに出演した女優。
鵜原憲一 (演:南原宏治)
禎子の夫。広告代理店勤務。金沢への出張中に失踪する。 かつては立川署の巡査だった。 映画版では、南原宏治が演じている。 南原宏治は、時代劇の悪役などで知られる俳優。
『ゼロの焦点』のあらすじと結末
結婚と失踪
山之内商事で働く禎子は、お見合いで鵜原憲一と結婚。新婚旅行から帰った矢先、憲一は金沢への出張中に失踪してしまう。 憲一は予定日を過ぎても戻らず、禎子は不安を募らせる。
憲一の足跡を追って
憲一の後任・本多と共に金沢へ向かった禎子は、憲一の足跡を辿り始める。 憲一がかつて立川署の巡査だったこと、田沼久子という女性と暮らしていたことがわかる。
関係者の死
憲一の義兄・宗太郎が金沢で殺害され、本多もまた何者かに毒殺される。 事件の真相を追う禎子は、久子と室田社長夫人・佐知子がかつて米兵相手の売春婦「パンパン」だった過去を知る。
ゼロの焦点
禎子は佐知子こそが全ての事件の黒幕だと確信する。 佐知子は、過去を隠すため、憲一、久子、宗太郎、本多を殺害していたのだ。 最後は、全てを失った佐知子が海に身を投げる。
まとめ
『ゼロの焦点』は、戦後日本の混乱期を背景に、人間のエゴや欲望が引き起こす悲劇を描いた作品です。ミステリーとしての面白さだけでなく、登場人物たちの複雑な心理描写、社会派としてのテーマ性も高く評価されています。